「一口だけ食べて」は逆効果? 発達特性のある子どもの偏食を理解する

こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです!

子育て中の保護者の方からよく寄せられるご相談があります。

「子供の偏食で困っている、どうしたら食べてくれるのか」

さて、

「苦手なものでも、一口だけ食べてみよう」

子どもの偏食に対して、よく使われる言葉です。

しかし、食べ物を口に入れることが、本当に「頑張ればできること」なのでしょうか。

発達特性のあるお子さんの中には、食べ物の味だけではなく、におい、色、見た目、温度、硬さ、舌触りなど、さまざまな感覚刺激に強い不快感を覚える方がいます。

大人から見ると「一口だけ」に見えても、本人にとっては非常に大きな挑戦になっていることがあります。

強い不安や恐怖が生じると、自律神経を介して吐き気などの身体症状が出ることもあります。また、嘔吐反射が過敏な場合には、口に入れた刺激をきっかけに実際に吐いてしまうこともあります。

つまり、「食べたくないから吐く」と単純に考えるのではなく、本人にとっては身体的な防御反応が起きている可能性もあるのです。

その状態で「頑張って食べなさい」と繰り返されると、食べ物そのものへの恐怖だけでなく、「給食の時間が怖い」「学校に行くのがつらい」という記憶につながることがあります。

では、どうすればよいのでしょうか。

まず考えたいのは、「食べられるようになること」だけを目標にしないことです。

スモールステップとは、必ずしも「一口食べる」ことではありません。

その食べ物の写真を見る。
絵本でその食べ物を見る。

同じ食卓に置いてみる。
家族が食べているところを見る。
においを少し確認してみる。

こうした「食べない練習」も、十分に意味のあるステップです。

大切なのは、本人が「ここなら大丈夫」と感じられる環境で行うこと。

不安が非常に強い状態で無理に食べさせてしまうと、「やっぱり怖かった」という経験が残り、かえって不安を強めてしまう可能性があります。

また、健康のために必要な栄養素は、必ずしも一つの食品からしか摂れないわけではありません。

特定の食品を食べられないことと、健康な食生活ができないことは、同じではありません。

そのため、まずは「安心して食事の時間を過ごせること」を大切にすることも重要です。

もちろん、食べられる食品が極端に少ない場合、体重の減少や栄養不足がある場合、嘔吐や強い不安が続く場合などには、医療機関への相談も検討してください。

学校生活では、給食についても「食べられるようにする」だけでなく、「安心して給食の時間を過ごせるようにする」という視点が必要です。

食べられないことを「わがまま」と決めつけるのではなく、

「何が苦手なのか」
「どんな刺激がつらいのか」
「どうすれば安心できるのか」

を一緒に探していく。

子どもが安心できる土台ができてこそ、新しいことに挑戦する力も育っていきます。

「できないことを、できるようにする」だけが成長ではありません。

自分の苦手さを知り、自分に合った方法を見つけ、安心して生活できるようになることも、大切な成長なのです。

この記事の著者

森 しほ

ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。
産業医として一般企業のケアも行っている。

◆専門分野: 精神医療 / 皮膚科
◆資格:日本抗加齢医学会専門医 / 産業医 / 公認心理師
◆所属学会:日本皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会
◆著書:『発達障害ママの子育てハック(監修) 』飛鳥新社

 

  取材実績(一部抜粋)

【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』( 【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。 )
【YouTube】『かずのすけ』( 敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ )
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
【Web記事】Medicalook

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