子ども用ハーネスは「かわいそう」なのか? 安全のための道具は、上手に使えばいい

こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです。

「子ども用ハーネス」に賛否両論、というニュースを見ました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0c9028cacd6d9782df732cb90a100ebfae45cce9

子どもの手をつないで歩くべきなのか。
ハーネスを使うのは過保護なのか。
「犬みたいでかわいそう」という意見もあれば、「命を守るために必要」という意見もあります。

子どもの安全を考える立場として、

「道具を使うこと自体が悪いわけではない。大切なのは、必要な場面で適切に使うこと」

だと思っています。

そもそも、「手をつなげば絶対に安全」というわけでもありません。

小さな子どもの腕を、手をつないだ状態で大人が急に引っ張ると、「肘内障」と呼ばれる状態になることがあります。

これは一般に「肘が抜けた」などと表現されることがありますが、医学的には肘の関節周辺で橈骨頭が亜脱臼する状態です。

子どもの腕を急に引っ張ったり、危険な場所から手を引いて移動させたりすることがきっかけになることがあります。特に小さな子どもでは起こりやすいとされています。(PubMed)

つまり、

「手をつなぐ=絶対安全」
「ハーネス=危険」

という単純な話ではないのです。

そして、もう一つ考えてほしいのが、発達特性のあるお子さんです。

たとえばADHDなどでは、注意を向け続けることや、衝動を抑えることが苦手な場合があります。

「ここで止まってね」
「道路に出ちゃダメだよ」

と理解していても、

「分かっているのに、瞬間的に走り出してしまう」

ことがあります。

これは「親のしつけが悪い」という話ではありません。

実際、ADHDのある子どもを対象にした研究では、道路を横断する場面で、定型発達の子どもより危険な行動が多くみられています。特に交通状況が複雑になるほど、その差が大きくなることも報告されています。(PubMed Central (PMC))

たとえば、保護者が荷物を持っている。

片手に買い物袋。
もう片方の手で子どもの手をつないでいる。

そこから子どもが突然、

「パッ!」

と走り出したらどうでしょう。

大人が反射的に手を引っ張ることで、子どもの腕に強い牽引力がかかることもあります。

もちろん、だからといって「手をつながないほうがいい」という意味ではありません。

むしろ、

その子、その場面、その家庭の状況に合わせて、安全性の高い方法を選ぶ。

これが大切だと思います。

たとえば、

 ・交通量の多い道路を歩く
・人混みの中を移動する
・子どもが急に走り出すことがある
・きょうだいも一緒に連れている
・保護者が荷物を持っている
・ベビーカーや抱っこひもを併用している

こうした状況では、手をつなぐだけでは十分に安全を確保できないことがあります。

そんなときにハーネスという選択肢がある。

私は、これは「子どもを拘束するための道具」ではなく、

子どもが安全に行動できる範囲を広げるための安全装具

と考えてよいと思います。

もちろん、ハーネスなら何でもいいわけではありません。

子どもの年齢や体格に合った製品を選び、説明書どおりに装着すること。

そして、ハーネスだけに安全を任せるのではなく、道路では大人が周囲を確認すること。

消費者庁やこども家庭庁も、子どもの事故防止について「安全な製品を選ぶこと」と「正しく使用すること」の重要性を繰り返し示しています。(カスタマーサポート協会)

そもそもチャイルドシートだって、ベビーカーだって、抱っこひもだって、すべて「子どもの安全を守るための道具」です。

道具を使うことを、

 「親が楽をしている」
「過保護だ」
「子どもがかわいそう」

と決めつける必要はないと思います。

大切なのは、

「その子にとって、いま何が一番安全か?」

を考えること。

子育ては、精神論だけでは安全を守れない場面があります。

「ちゃんと言い聞かせればいい」
「手をつないでいればいい」

だけでは対応できない子どももいます。

だからこそ、

手をつなぐ。
抱っこする。
ベビーカーを使う。
ハーネスを使う。
必要なら周囲に助けを求める。

いろいろな道具や方法を、状況に応じて使い分ければいい。

「道具に頼る」のではなく、

道具を上手に使って、子どもを守る。

私は、それでいいと思います。

この記事の著者

森 しほ

ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。
産業医として一般企業のケアも行っている。

◆専門分野: 精神医療 / 皮膚科
◆資格:日本抗加齢医学会専門医 / 産業医 / 公認心理師
◆所属学会:日本皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会
◆著書:『発達障害ママの子育てハック(監修) 』飛鳥新社

 

  取材実績(一部抜粋)

【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』( 【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。 )
【YouTube】『かずのすけ』( 敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ )
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
【Web記事】Medicalook

他多数

森しほへの取材依頼はこちら