「ドパガキ」にならない5つの習慣

こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです。

最近、「ドパガキ」という言葉がよく使われています。

ドパガキは医学用語ではありませんが、「ドパ」はドーパミン、「ガキ」は子供や若者を指しており、「ドーパミンが出そうな強い刺激を、次々と追いかける状態になっている人」という意味で使われることが多いようです。

「ドパガキ」なのは子供だけ?

子どもに「スマホばかり見ないの!」と言いながら、親自身が食事中もスマホを見ている。そんな家庭も少なくありません。

実は研究では、親が子どもとの時間にスマホなどを持ち込み、会話や遊びを中断してしまう「テクノフェレンス(technoference)」と、子どもの問題的なスマホ・メディア利用との関連が報告されています。2025年のメタ解析では、53研究・約6万人を対象に検討され、親のテクノフェレンスが多いほど、子どもの問題的なメディア利用も多いという関連が確認されました。 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39841982/

もちろん、「親がスマホを見たから子どもがスマホ依存になった」と単純に言えるわけではありません。子どもの性格や家庭環境、親のストレスなど、さまざまな要因が関係します。

それでも私は、子どもにスマホの使い方を教えるときこそ、「何時間まで」と上から言うだけではなく、大人自身がスマホを置く姿を見せることが大切だと考えます。

子どもは、親が何を言うかよりも、親が何をしているかをよく見ているのです。

「ショート動画=悪い」とか、「ドーパミンがたくさん出る=悪い」ではありません。

ショート動画にもメリットがあります。

まず短時間で情報を得られること。

短い時間でニュース、料理、語学、運動、医療などの情報に触れられます。特に「まず興味を持つ入口」としては優秀です。

また、学習のきっかけになるという面もあります。短い動画は、難しい内容を視覚的に理解しやすくしたり、「もっと知りたい」という興味を引き出したりします。動画を使った学習は、文章だけよりも理解しやすいですし、記憶が深くなりやすいですね。

そして、上手に使えば気分転換、ストレス解消になります。

面白い動画を見て笑うと息抜きになります。

使い方によっては人との交流ツールにもなるので、心の安定に役立つ側面もあります。

「スマホを使う=メンタルに悪い」ではありません。

また、ドーパミンは、やる気や学習、行動を起こすためにも欠かせない大切な物質です。

問題なのは量だけではなく、「何をきっかけに」、「どんな行動を繰り返すようになっているか」です。

ただし、ドーパミン=幸福ではありません。

誤解されやすいところですが、ドーパミンは、よく「快楽ホルモン」と説明されますね。

ところが、厳密には少し違います。

ドーパミンはむしろ、

「もっと欲しい」
「もう一回やってみたい」
「こっちに行けば何かありそう」

という「欲しい・追いかけたい」という動機づけに深く関係しています。

一方、「実際に気持ちいい」「満たされた」という感覚、つまり快感は、ドーパミンだけでは説明できません。

脳内のオピオイド系など、複数の仕組みが関わっています。 

つまり、

「ドーパミン=幸せ」ではありません。

ドーパミン=「それ、欲しい!」「次!」と行動を動かすアクセル、くらいに考えると分かりやすいのではないでしょうか。

「ドパドパ刺激」が続くと、じんわりした幸せが物足りなくなることがあります。

ショート動画、ゲーム、SNSなどには、短時間で「面白い」「勝った」「新しいものが出てきた」という報酬が何度も入ってきます。

もちろん、これ自体が悪いわけではありません。

ゲームには達成感がありますし、SNSには人とつながるメリットもあります。

問題は、刺激を無制限に追い続けることです。

脳が「次の刺激」を探すモードに偏ると、

「静かに本を読む」 「散歩する」 「料理をする」 「人とゆっくり話す」 「コツコツ勉強する」といった、報酬までに時間がかかる活動が相対的に退屈に感じられることがあります。

ここで重要なのは、「ドーパミンが出すぎて枯れる」という単純な話ではないということです。

「欲しい・追いたい」という動機づけと、「実際に満たされた」という快感は別物、というところがポイントです。

「もっと見たい」という衝動は強いのに、見終わったあと別に満たされていない、ということになってしまうのです。

これは、ドーパミンの「欲しい」と快感の「気持ちいい」がズレてくるイメージです。

「欲しい」が強くなる一方で、必ずしも「好き・気持ちいい」が同じように増えるわけではないという研究データもあります。

努力して「できた!」という幸福にも、ドーパミンは関係しています。

「じゃあドーパミンを減らせばいいの?」というと、まったくそんなことはありません。

ただ、ドーパミンを「簡単な刺激」だけに使わないことです。

例えば、昨日できなかったことができた。
 勉強して、テストで点数が上がった。
 練習して、スポーツが上手になった。
 仕事を頑張って、成果が出た…。

こういう「努力→達成」でも、報酬系が働きます。

人間の脳では、報酬だけでなく「努力」と「報酬」の関係を学習する過程にもドーパミン系が関わっています。2026年のヒトを対象とした二重盲検試験でも、ドーパミンD2受容体を遮断すると、努力が学習に及ぼす影響が損なわれることが示されています。 

つまり、

「努力して、できるようになった!」

も、脳にとっては立派な報酬なのです。

しかも「簡単に与えられる刺激」だけでなく、自分で行動して手に入れられると、学びや自己効力感を得ることができます。

親しい人と実際に会って話すことも、脳にとっては「報酬」です。

もう一つ忘れてはいけないのが、人とのつながりです。

親しい人と会って、

「今日こんなことがあってさ」と話す。

一緒に笑う。

相手の表情を見る。

触れ合う。

こうした社会的な交流も、脳の報酬系を動かします。

実際、人との社会的な交流によって、脳の報酬系の一部である腹側線条体が活動することがヒトのfMRI研究で確認されています。 

さらに社会的なつながりには、ドーパミンだけではなくオキシトシンや内因性オピオイドなど、複数の神経・内分泌システムが関係しています。 

ですから「幸せホルモンはこれ!」と一つに決めることはできません。

本当の充実感は、

「楽しい!」という一瞬の刺激だけではなく、
人とのつながり、達成感、安心感、意味を感じることなどが重なったもの、と医学的には考えられます。

気をつけたいのは「刺激の強さ」より「刺激しか楽しめなくなること」です

「ゲームをするからドパガキ」
 「TikTokを見るからドパガキ」ではありません。

ショート動画もゲームも、楽しんでいいのです。

問題は、

「暇になると必ずスマホ」
 「ちょっと退屈すると動画」
 「勉強よりゲーム」
 「人と話すよりSNS」
 「何もしていない時間に耐えられない」という状態になっていくことです。

2024年の若年者を対象とした182研究、約116万9000人を含む系統的レビューでは、一般的なSNS利用とメンタルヘルスとの関連は小さい一方、問題のあるSNS利用は、抑うつ・不安、睡眠問題と関連していました。 

「SNSを1時間使ったらアウト」という単純な話ではありません。

生活の中で、スマホ以外の楽しみがちゃんと残っているかどうかを見ることが大切です。

医師としておすすめしたい「ドパガキにならない5つの習慣」

1.「刺激をゼロにする」のではなく、刺激の入れ方のルール決めましょう。

ショート動画を見るな、ゲームするな、ではなく、

「夜は30分だけ」
 「食事中は見ない」
 「寝室にはスマホを持ち込まない」など、自分で終わりを決めておくことです。

特に「あと1本だけ」は、終わりがないことにもなるので要注意です。

2.あえて毎日「退屈な時間」を少し作りましょう。

何もしない時間は、無駄ではありません。

お風呂に入る。 散歩する。 窓の外を見る。 音楽だけ聴く。

最初は「暇だな」と感じても構いません。

「退屈=すぐ刺激を入れる」という習慣を作らないことが大切です。

3.子どもには「すぐ楽しめるもの」だけでなく「頑張ったら楽しいもの」を渡しましょう。

これは子育てでも非常に重要です。

ゲームや動画を禁止するより、

「自転車に乗れるようになった!」 「料理を一人で作れた!」 「昨日より漢字が書けた!」 「一緒に公園で遊んだ!」

という、努力→成長→達成感の経験を増やすようにしましょう。

子どもに必要なのは「刺激を与えないこと」ではなく、単純な刺激以外にも楽しいものがたくさんあるという経験です。

4.人と会うを予定を作りましょう

出来ればSNSだけではなく、実際に会って話しましょう。

一緒に食事する。

一緒に散歩する。

笑う。

こうした時間は、SNSでは代替できません。

社会的な交流そのものが報酬系を刺激することも分かっています。 

直接会うことが難しい場合であれば、電話をする、zoomなどで姿をみながら話すのでも文字だけのやりとりよりはいいですし、それも難しければ昔の友達など直接知っている人とLINEをする、でも構いません。

5.「少し時間がかかるけど好きなこと」を大切にしましょう。

運動でも、勉強でも、仕事でも、趣味でも構いません。

「ちょっと面倒だけど、終わったら気持ちいい」

という活動を一つ持ってください。

実は、ここにもドーパミンの重要な役割があります。

ドーパミンは「ラクして楽しむためだけの物質」ではありません。

「欲しいものに向かって動く」「努力して学ぶ」「達成したことを次の行動につなげる」

ための脳内システムでもあります。 

だから私は、

「ドーパミンを減らそう」ではなく、
「ドーパミンの使い道を増やそう」と考えるのがおすすめです。

ショート動画もゲームも、楽しいなら楽しんでいいと思います。

でも、それだけに一日の大半を費やしてしまうと何も残りません。

人と笑う、身体を動かす、勉強する、仕事をする、 何かを練習する、小さなことでも昨日できなかったことが今日できるようになるといった時間の使い方を意識してみてください。

そういう「少し時間がかかる幸せ」を、ちゃんと脳に覚えさせてあげましょう。

この記事の著者

森 しほ

ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。
産業医として一般企業のケアも行っている。

◆専門分野: 精神医療 / 皮膚科
◆資格:日本抗加齢医学会専門医 / 産業医 / 公認心理師
◆所属学会:日本皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会
◆著書:『発達障害ママの子育てハック(監修) 』飛鳥新社

 

  取材実績(一部抜粋)

【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』( 【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。 )
【YouTube】『かずのすけ』( 敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ )
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
【Web記事】Medicalook

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