カップルカウンセリング について

こんにちは、ゆうメンタルクリニック 医師の森しほです。
さて、最近SNSでこんな話が話題になっていました。
はてな匿名ダイアリー■離婚してから自分が性格悪いことに気づいた
離婚した元夫との問題を振り返っている女性のお話です。
これを受けて、Xでは、「これは女性が悪くない?」「いや夫が悪い」など様々な意見が飛び交っていました。
こちらの投稿者さんは、おそらく「問題が起きたら、話し合って原因を見つけて、次に同じことが起こらないようにする」という問題解決型の考え方が強い方なのだと思います。
これは、決して悪いことではありません。
むしろ仕事では、とても有能な考え方です。
「何が起きたのか」
「なぜ起きたのか」
「次はどうすれば防げるのか」
を整理していく。
だから、相手との関係でも、
「どうしてそうなったの?」
「何が嫌だったの?」
「いつからそう思っていたの?」
「じゃあ次はどうすればいい?」
と聞きたくなる。
そして、その質問自体には悪意がありません。
「責めたい」のではなく、「理解したい」「改善したい」のですよね。
ところが、ここに大きな落とし穴があります。
相手にとっては、その「理解したい」という質問が、必ずしも「愛情」や「誠実さ」として伝わるとは限らないのです。
むしろ、「答えを出すまで逃がしてもらえない」と感じることがあります。
これは、心理学的には「認知スタイルの違い」と考えると分かりやすいでしょう。
人間は、自分と同じように考えるわけではありません。
たとえば、同じ出来事が起きても、
「原因を言語化したい人」
もいれば、
「今は感情が整理できていないから、少し距離を置きたい人」
もいます。
「話せば分かり合える」と感じる人もいれば、
「話し合いそのものが負担になる」と感じる人もいます。
どちらが正しいという話ではありません。
いわば、人間同士は「異星人同士」くらい違うものなのです。
『ポケットモンスター』のサトシとピカチュウだって、同じ感覚を持っているわけではありません。
それでもサトシは、ピカチュウが何を嫌がり、何を喜ぶのかを理解しようとするでしょう。
大切なのは、「相手も自分と同じように感じるはず」と考えることではなく、
「この人は、自分とは違う感じ方をする人なんだ」
と理解しようとすることです。
恋人や夫婦、親子でも、ここは同じです。
「私はこう思うんだから、相手もこう思うはず」
「私なら説明できるんだから、相手も説明できるはず」
「私なら、相手を傷つけたら理由を説明するんだから、相手もそうするべき」
と考えてしまうと、相手の行動が理解できなくなります。
そこで、「なんで?」「どうして?」「普通はこうするよね?」が増えていきます。
そして、その「なぜ?」が増えるほど、相手はさらに黙ってしまう。
するとこちらは、
「黙るということは、やっぱり何か隠しているのでは?」
と感じて、さらに聞きたくなる。
こうして、追う人と逃げる人のような循環ができてしまうことがあります。
カップル間の心理学では、こうしたパターンを「追求-撤退パターン」と捉えることがあります。
もちろん、このケースでも、相手側に問題がなかったとは言い切れません。
急に態度が変わったり、説明をせずに関係を終わらせたりすれば、残された側が混乱するのは当然です。
「どうして?」
と聞きたくなるのも自然です。
ですから、
「相手が全部正しい。あなたが全部悪い」
という話ではありません。
ただ、ここで一つ、とても大切なことがあります。
「相手に自分を納得させる義務がある」とまでは言えないということです。
相手に説明を求めることはできます。
「私はこう感じたので、もし話せるなら教えてほしい」
と伝えることもできます。
でも、
「あなたには説明する責任がある」
「私が納得するまで説明して」
「納得できる説明をするのはあなたの義務」
となってしまうと、話し合いではなく、相手に「納得させる仕事」を要求する形に変わってしまいます。
ここには、「自分が理解できれば、苦しさが終わる」という心理もあるのかもしれません。
でも、相手の説明によって自分の不安を完全になくしてもらうことは、相手にはできません。
これは少し厳しく聞こえるかもしれませんが、恋愛ではとても大切な境界線です。
「相手に説明してもらいたい」という気持ちと、
「相手に自分の不安を解消してもらいたい」という気持ちは、似ているようで違います。
後者が強くなりすぎると、相手への依存になってしまうことがあります。
逆に、「相手が悪いからこうなった」と原因をすべて相手側に置いてしまえば、他責的になってしまいます。
そして、
「私が全部悪い」
「私がもっと我慢すればよかった」
とすべて自分の責任にしてしまえば、自責的になってしまいます。
大切なのは、そのどちらでもありません。
「相手にも事情があった」
「自分にも改善できるところがあった」
この二つを同時に持つことです。
今回の投稿者さんは、最後には、
「元夫にも、好きだった人にも似たことを言われた」
というところから、自分自身を振り返っています。
これは、とても大切な気づきだと思います。
もし複数の相手から似たことを言われたのであれば、
「自分にも何かコミュニケーション上の癖があるのかもしれない」
と考えてみる価値はあります。
ただし、それは「自分が全部悪かった」という意味ではありません。
たとえば、
「私は問題を解決するために質問している」
と思っていても、
相手には、
「私を論破して、正しい答えを言わせようとしている」
と感じられている可能性があります。
これは、本人に悪意がなくても起こります。
特に「私は怒鳴っていない」「冷静に話している」ということと、「相手が心理的に追い詰められていない」ということは、同じではありません。
声を荒らげなくても、質問が途切れず、相手が「もう無理」「一人にして」「今日は話したくない」と言っているのに話し合いが続けば、相手にとっては強い心理的負担になることがあります。
ここで重要なのが、「共感」と「理解」は違うということです。
私たちは、相手の気持ちを完全に理解することはできません。
親子でも、夫婦でも、長年一緒にいる恋人でもです。
相手の脳と自分の脳は別物だからです。
でも、
「この人は今、疲れているんだろうな」
「眠れていなくてつらいのかもしれない」
「今は私と話す余力がないのかもしれない」
と想像することはできます。
それが共感です。
相手の「痛覚」が自分とつながったように感じることは、共感の一つの側面です。
ただし、共感とは、
「私だったらこう感じるから、この人もこう感じているはず」
ということではありません。
むしろ、
「私はあなたと同じ気持ちではない。でも、あなたが今つらいということは大切にしたい」
という姿勢なのだと思います。
これは、恋人関係でも非常に重要です。
相手を自分と同一視しすぎると、
「私ならこうする」
↓
「だからあなたもこうするはず」
↓
「そうしないということは、あなたがおかしい」
という思考になりやすくなります。
心理学的には、自己と他者の境界、つまり「心理的境界」が曖昧になっている状態として考えることもできます。
良いパートナーシップは、「何でも同じ」ではありません。
むしろ、
「違っているけれど、その違いを調整できる」
ことが大切です。
恋人を選ぶときには、もちろん価値観や生活スタイル、金銭感覚などの共通点も重要です。
でも、それ以上に、
「意見がずれたとき、この二人はどうやって調整できるのか」
を見ることが大切なのではないでしょうか。
意見が一致しているときは、誰とでも仲良くできます。
問題になるのは、意見が食い違ったときです。
そのときに、
「あなたがおかしい」
になるのか、
「私とは違うんだね。じゃあどうすれば二人とも苦しくないかな」
になれるのか。
ここが、長く続く関係では非常に重要です。
もし今、
「自分ばかりが我慢している」
「相手が話し合ってくれない」
「どうして分かってくれないの?」
「何度説明しても伝わらない」
という状態になっているのであれば、どちらか一方を悪者にする前に、一度「二人の間にどんな循環が起きているのか」を見てみてください。
「追う人」と「逃げる人」。
「説明を求める人」と「距離を取りたい人」。
「正しさを確認したい人」と「安心を取り戻すために離れたい人」。
どちらか一人を変えるだけではなく、この循環そのものを変えていく。
それが、カップルの問題を解決するときにはとても大切です。
そして、一人ではその循環が見えにくいこともあります。
「自分が悪いのか、相手が悪いのか分からない」
「話し合うほど関係が悪くなる」
「相手に分かってほしい気持ちが止まらない」
「もう何を言っても伝わらない」
そんなときは、二人だけで何とかしようとせず、第三者を入れてみるのも一つの方法です。
たとえば、カップルカウンセリングというものがあります。
お互いの「正しさ」を決めるのではなく、二人の間で起きているコミュニケーションのパターンを一緒に整理していくことができます。
「どちらが悪いのか」ではなく、
「どうすれば、この二人はもう少し楽に一緒にいられるのか」。
その視点から、一度二人の関係を見直していくこともできます。
https://yuik.net/couple_counseling
取材実績(一部抜粋)
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