猫を飼うと、うつにならない?!
心がつらいときこそ、「今日やること」をひとつ作る。生活を支える“小さな役割”のすすめ

こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです。
日々、働く方のメンタルヘルス相談に携わっています。
「猫を飼うと、メンタルにいいですか?」
そんな質問をされることがあります。
たしかに、
猫がそばにいるだけで癒やされる。
帰宅すると迎えてくれる。
毎日ごはんをあげる。
でも、ここで少し考えてみたいのは、
「猫そのものが心を治してくれるのか?」
ということとは別に、生活の中に
“小さな役割”があることの意味です。
心が疲れているとき、
「何もしたくない」
と感じることがあります。
ベッドから出るのも面倒。
人に会うのも嫌。
先のことを考えると不安。
そして、何もしていない時間に、
嫌なことばかり考えてしまう。
これは「怠けている」のではありません。
うつ状態などでは活動量が落ち、
それによって気分がさらに落ち込み、
また活動できなくなる……
という循環が起こることがあります。
さらに、嫌なことを頭の中で
何度も繰り返し考えてしまう
「反すう思考」が続くと、
ますます気持ちが
つらくなることもあります。
そこで大切なのが、
「気分がよくなったら動こう」
としないこと。
むしろ、気分とはいったん切り離して、
先に小さな行動を置いてみる。
これは、うつ病の心理療法のひとつである
「行動活性化」の考え方にもつながります。
行動活性化では、
気分が変わるのを待つのではなく、
日常生活の中に少しずつ活動を
取り戻していくことを重視します。
たとえば、
「朝になったらカーテンを開ける」
「植物に水をあげる」
「毎朝コーヒーを淹れる」
「ベランダの洗濯物を取り込む」
「週に一度、友人に連絡する」
これくらいで十分です。

猫を飼っているなら、
「朝、猫にごはんをあげる」
という行動も、そのひとつになるでしょう。
「猫のために起きる」という、
ほんの小さな役割です。
ただし、ここで
誤解してほしくないことがあります。
「ペットを飼えば、うつが治る」
という話ではありません。
ペットとの関わりと
メンタルヘルスについて調べた研究では、
良い影響を示すものがある一方、
研究によって結果は一致しておらず、
明確な効果が確認できないものもあります。
だから私は、ペットそのものよりも、
そこにある
「生活のリズム」
「誰か・何かを気にかける時間」
「毎日の小さな予定」
に注目したいと思っています。
そして、それは
猫や犬である必要もありません。
「毎朝、ベランダの植物を見る」
でもいい。
「金曜日は好きなパンを買う」
でもいい。
「水曜日は友人にメッセージを送る」
でもいい。
大切なのは、
その日の自分でもできるくらい、
小さくすることです。
一方で、
ペットを飼うことには責任もあります。
「自分がいないと、この子が困る」
という責任が、かえって
プレッシャーになる人もいます。
体調が大きく変化する可能性がある場合は、
・体調が悪い日は誰が世話をするか
・入院したらどうするか
・旅行のときはどうするか
・費用をどうするか
まで考えておくことが大切です。
これはペットに限りません。
私は、心の安定とは
「何も問題が起こらないこと」
ではないと思っています。
むしろ、
「問題が起きたとき、
誰に頼ればいいかが決まっていること」
のほうが、ずっと現実的です。
家族に頼る。
友人に頼る。
専門家に相談する。
必要なサービスを利用する。
誰かに頼ることは、弱さではありません。
自分の生活を長く続けるための、
立派な生活スキルです。

そして、何もできなかったと思う日にも、
「歯を磨いた」
「カーテンを開けた」
「薬を飲めた」
「シャワーを浴びた」
それだけで十分な日があります。
心が元気なときの「できること」と、
心が疲れているときの
「できること」は違います。
だからこそ、生活をその日の自分に
できるサイズまで小さくしてあげる。
「今日はこれだけやればいい」
というものを、ひとつだけ決めておく。
猫でも、植物でも、コーヒーでも、
好きなパンでもいい。
心がつらいときこそ、
人生を大きく変えようとしなくていい。
まずは今日を支える、小さな役割をひとつ。
それが、明日の自分を
助けることがあります。
※気分の落ち込みが長く続く、眠れない・食べられない、仕事や日常生活に大きな支障が出ている場合は、「小さな習慣で頑張る」だけで抱え込まず、医療機関など専門家への相談も検討してください。
参考文献
・Richards DA, et al. Behavioural activation for depression.
・Hodgson K, et al. Pet Ownership and Quality of Life: A Systematic Review of the Literature. Vet Sci. 2021.
・Crossman MK. Effects of Interactions With Animals On Human Psychological Distress. J Clin Psychol. 2017.
取材実績(一部抜粋)
【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』(
【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。
)
【YouTube】『かずのすけ』(
敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ
)
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
【Web記事】Medicalook
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