「孫疲れ」がニュースに。「目に入れても痛くない」ほどかわいい。だからこそコンタクトレンズと同じで、入れっぱなしなら疲れる。

こんにちは、ゆうメンタルクリニック医師の森しほです。

最近、「孫疲れ」がニュースになっています。

孫が帰省してくる。

久しぶりに会えるのはうれしい。
 成長した姿を見るのも楽しみ。

でも、その一方で、

 「正直、長期間いると疲れる」
 「食事や洗濯、遊び相手まで全部やっていると大変」
 「かわいいけれど、帰ったあとはぐったりする」

という祖父母世代の声もあります。

実際、2026年のニュースでも、海外から帰省する孫が約1カ月滞在し、祖父母が食事の準備や洗濯などを担っているケースが紹介され、「孫はかわいいけれど負担にもなる」という問題が取り上げられていました。(テレ朝NEWS⁠)

これは、私は決して「孫が嫌いだから」だとは思いません。

むしろ、大切に思っているからこそ頑張りすぎてしまうことがあるのだと思います。

子どもが小さいと、食事、遊び、入浴、睡眠、ケガをしないかという安全への配慮まで、ずっと気を張ることになります。

しかも今の祖父母世代は、「仕事を引退して、あとは孫の面倒を見る」という人ばかりではありません。

内閣府の高齢社会白書でも、65歳以上の就業者数・就業率は上昇傾向にあります。つまり、仕事や自分自身の生活を持ちながら、孫の世話まで担っている人も少なくありません。(内閣府ホームページ⁠)

そう考えると、「孫疲れ」は単なる体力の問題だけではなく、役割の問題としても考えられます。

精神医学・心理学の視点から見ると、人間にとって「自分には役割がある」「誰かに必要とされている」という感覚は、必ずしも負担ではありません。

むしろ、生きる意味や目的を感じることは、心身の健康と関連しています。

2026年に発表されたメタ解析では、約48.9万人を含む研究データを分析したところ、人生の目的意識が高い人ほど、早期死亡リスクが約30%低いという関連が示されました。

もちろん、これは「役割を持てば30%長生きする」という因果関係を証明した研究ではありません。

ただ、「自分にはやることがある」「誰かの役に立っている」という感覚が、人間の健康と関連していることは、これまでにも繰り返し報告されています。(PubMed⁠)

だから、

「孫のためなら頑張れる」

ということ自体は、とても素敵なことなんです。

孫の成長を見ることが楽しみになったり、孫から「おばあちゃん大好き」と言われることが生きがいになったり。

そうした「役割」や「つながり」は、人生の張り合いになることがあります。

ただし、ここには重要な落とし穴があります。

役割があることと、役割を背負いすぎることは違う。

「孫の世話をするのが楽しい」から、

「祖父母なんだから、全部やらなければ…」

に変わった瞬間、話が変わってきます。

心理学的には、複数の役割や期待が重なって負担になる「役割過重」の状態に近づいていきます。

そして、疲労が蓄積すると、イライラする、眠れない、気分が落ち込む、何もしたくなくなる……といったメンタル面の不調につながることがあります。

だから大切なのは、

「孫に会わないこと」ではありません。

「無理なく続けられる距離感をつくること」です。

たとえば、

 ・食事を毎回祖父母が作らない
 ・家事を祖父母だけに任せない
 ・滞在期間をあらかじめ相談する
 ・孫との時間とは別に、自分の休息時間を確保する
 ・疲れたときは「今日は休みたい」と言えるようにする

そして、親世代も、

「孫なんだから、見てもらって当然」

ではなく、

「一緒に過ごしてくれてありがとう」

と伝える。

祖父母側も、

「今日はちょっと疲れたから休むね」

と言っていい。

「かわいい」と「疲れない」は、別の話です。

孫にとって祖父母が大切な存在であるように、祖父母にも自分自身の人生があります。

だからこそ、

「孫が生きがいになる」のは素敵だけれど、
 「孫のために自分を犠牲にする」必要はない。

役割があることは、人に張り合いを与えてくれることがあります。

でも、その役割を無理なく続けるためには、休むことも必要です。

お互いに無理をしすぎず、良い距離感を保ちながら、感謝を持って暮らしていく。

「孫は来てうれしい。帰ってうれしい。」

昔から言われるこのくらいの距離感が、もしかすると家族みんなのメンタルにとって、ちょうどいいのかもしれません。

この記事の著者

森 しほ

ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。
産業医として一般企業のケアも行っている。

◆専門分野: 精神医療 / 皮膚科
◆資格:日本抗加齢医学会専門医 / 産業医 / 公認心理師
◆所属学会:日本皮膚科学会 / 日本抗加齢医学会
◆著書:『発達障害ママの子育てハック(監修) 』飛鳥新社

 

  取材実績(一部抜粋)

【雑誌】マガジンハウス「Tarzan」
【雑誌】株式会社プレジデント社「PRESIDENT WOMAN」
【TV】フジテレビ『バイキング』
【TV】TBS『ビビット』
【YouTube】『ぶーちゃんねる-歌舞伎町リアル-』( 【病院】歩き辛いくらいアトピーがひどいので皮膚科に行ってきました。 )
【YouTube】『かずのすけ』( 敏感肌でもできる【痛くない医療脱毛】はあるの?お肌に優しい脱毛を受け続けたら5年前より若返った30歳男子の『顔脱毛』体験レポ )
【Web記事】LITALICO発達ナビ
【Web記事】LITALICO仕事ナビ
【Web記事】Medicalook

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