「思ってる」とつけるべきという話。~新橋心療内科コラム

◆ 思考の沼から一瞬で抜け出す「たった3文字」の心理テクニック
仕事でミスをしたときや、人間関係でトラブルがあったとき、私たちの頭の中はネガティブな言葉で一色になりがちです。
一度このモードに入ってしまうと、まるでそれが「絶対の事実」であるかのように思えてきて、
どんどん気分が重くなってしまいますよね。
そんなとき、一瞬でその重苦しい思考から距離を置き、心をスッと軽くする魔法のような心理テクニックがあります。
それは、自分の頭に浮かんだネガティブな言葉の後ろに、ただ「〜と思ってる」と付け足すだけです。
「もう人生終わりだ!」 ⇒ 「もう人生終わりだ……『と思ってるなぁ』」
「あの人に嫌われてる!」 ⇒ 「あの人に嫌われてる……『と思ってる』」
そう、たったこれだけです。
「え、それだけで何か変わるの?」って思うじゃないですか。 これが驚くほど効くんですよ。
◆ 心理学が証明する「脱フュージョン」の凄み
心理学、特に現代の認知行動療法の一つである「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」の世界では、
このテクニックを『脱フュージョン』と呼びます。
人間がメンタルをやられるときというのは、
自分の「思考」と「現実」がぴったりと貼り付いてしまっている状態です(これをフュージョン=合体と呼びます)。
「人生終わりだ」という単なる脳内のつぶやきを、
「本当に人生が終わったという事実」として脳が誤認してしまうから、猛烈な恐怖や絶望感に襲われるわけです。
ところが、語尾に「〜と思ってる」と付け加えるだけで、頭の中に変化が起きます。
主語が「現実」から「自分の考え」に切り替わり
「あ、これは事実ではなく、ただ自分の脳がそう『思っているだけ』なんだな」
と、自分の思考を客観的に観察する視点が生まれるのです。
脳科学的にも、自分の感情や思考を第三者目線で眺めると、
暴走していた脳の感情センサーの興奮が鎮まり、冷静さを司る部分(前頭前野)が働き始めることが分かっています。
◆ 自分を「実況プレイ」する感覚を持とう
私たちはついつい、頭の中に浮かんだ不吉な考えを「世界の真実」だと勘違いしてしまいがちです。
でも、脳が吐き出す思考なんて、その日の体調や天気、ちょっとした寝不足なんかでコロコロ変わる「単なるお天気」みたいなもの。
「雨が降ってきたな」と眺めるのと同じように、
「あ、いま自分は『人生終わった』って思ってるんだな〜」と、自分の心の中を実況プレイしてあげる感覚を持つのがコツです。
思考と自分との間にちょっと隙間を作ってあげるだけで、人間はパニックにならずに冷静さを取り戻せます。
もし今、頭の中でネガティブな言葉がぐるぐる渦巻いている人がいたら、
ぜひその言葉の語尾に「〜と思ってる」をくっつけて呟いてみてください。
「あ、ただの思考だな」と気づけた瞬間から、あなたはもうそのネガティブな感情に支配されなくなっていますよ。
今回もここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)



