自己開示の「最良の数」。~新橋心療内科コラム


人と仲良くなるためには、自分のことを話すのが大切です。

好きなものや趣味、過去の経験、ちょっとした悩みなどを打ち明けることで、相手との距離は少しずつ縮まっていきます。

心理学では、こうして自分自身についての情報や気持ちを相手に伝えることを「自己開示」と呼びます。
実際、自己開示は親密な人間関係を築くうえで、大切な役割を果たすことが知られています。

ただし、ここにはひとつ落とし穴があります。

それは、「たくさん話せば話すほど、仲良くなれるわけではない」ということです。

たとえば、初対面の相手から突然、

「実は昔、家族と大きなトラブルがあって……」
「前の恋人にひどいことをされて……」
「今、人生が本当につらくて……」

と、次々に重い話をされたらどうでしょうか。

相手のことを理解したい気持ちはあっても、どう反応すればいいのか戸惑ってしまうかもしれません。

特に、不安な気持ちが強いときや、誰かに話を聞いてほしい気持ちがたまっているときは、
つい一度にたくさんのことを打ち明けたくなる場合があります。

もちろん、深い話をすること自体は悪いことではありません。

大切なのは、相手との関係性や、その場の雰囲気に合わせることです。

心理学では、相手の自己開示に応じて、こちらも自分のことを話しやすくなる「自己開示の返報性」という現象が知られています。
つまり、自己開示は一方的に話し続けるよりも、お互いに少しずつ交わしていくことが大切なのです。

そこで、ひとつの目安としておすすめしたいのが、

「一回の会話で、深い話は一個まで」

という考え方です。

もちろん、これは心理学的に決められた正解の数ではありません。

ただ、話しすぎを防ぐための、自分なりのルールとしては役立ちます。

ひとつ深い話をしたら、いったん相手の反応を見てみる。

相手も自分の経験を話してくれたら、そこから会話を広げてみる。

逆に、少し困っているようなら、無理に話を続けず、軽い話題に戻してみる。

そうやって、お互いに心地よいペースを探していけばいいのです。

人との距離を縮めるのは、打ち明けた秘密の数ではありません。

「この人とは安心して話せるな」

と思える経験を、少しずつ積み重ねていくことです。

自己開示は、量よりもタイミング。

自分のことを知ってもらうのと同じくらい、相手の話を聞くことも大切にしてみてください。

今回の話、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)